離婚手続
離婚成立までの流れ
毎年多くの夫婦が様々な理由で離婚しています。離婚の主な理由は、性格不一致・暴力・異性関係であり、婚姻期間20年以上の熟年離婚の割合も年々増加傾向にあります。まずは簡単に、離婚成立に至る流れを見てみましょう。
協議離婚
まずは話し合いです。
この段階で決着する割合が最も高く、全体の約9割を占めます(平成20年)。
調停離婚
話し合いで決着がつかない場合は調停をします。
調停とは、家庭裁判所で男女各1名の調停委員に間に入ってもらって話し合いを行う手続です。離婚のプロが間に入ることで、冷静に話し合いが期待できます。
なお、話し合いで決着がつかない場合でもいきなり訴えることはできません(調停前置主義)。お金の貸し借りなどと違い、離婚問題はできるだけ合意で決着をつけるべきだと考えられているからです。
裁判離婚
調停でもなお決着がつかなければ最後は訴えることになります。
裁判離婚は協議・調停離婚と違って、相手が納得していなくても裁判所が強制的に離婚を命じるので、法律上一定の理由が必要とされています。
具体的には、①不貞行為(不倫など)②悪意の遺棄(生活費も入れず家庭をほったらかしにするなど)③3年以上の生死不明④回復見込みのない強度の精神病⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由(DVなど)の5つです。
考えないといけないこと
離婚する覚悟があるか
離婚を真剣に考え始めたときこそ冷静になって将来を考えなければなりません。特に女性やシングルマザーにとっては、慰謝料や養育費をキッチリ決めても約束どおり払ってくれるかは分かりませんし、もらえる手当を考えても離婚することで経済的に苦しくなるのが一般的だと思います。
結局、「たとえ苦しい生活になってでも離婚した方が良いと思えるかどうか」が指針になるでしょう。
お金のこと
離婚を決意したときにまず考えないといけないのは、やはりお金のことです。主には下記の4つです。
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財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻後に築いてきた財産を分けることをいいます。
具体的には不動産の名義を変えたり、預貯金を何割か渡したりするのですが、これはあくまでも実質的に判断するので、どちらの名義になっているかは関係ありません。離婚成立後も財産分与の請求はできますが、2年の時効にかかる点に注意が必要です。 -
慰謝料
慰謝料とは、離婚に伴う精神的苦痛をお金に見積もったものです。しかし、精神的苦痛は千差万別で、一定の基準を設けることは事実上不可能です。
そこで、裁判では離婚原因やその程度、婚姻期間や相手方の支払い能力などの事情を総合的に考慮して決められていますが、一般的には少ないなと感じる方が多いようです。 -
養育費
養育費とは、一般的には元夫が子供に対し、成人するまで支払う費用を言います。
離婚することで夫婦は他人になれても、子供とは他人になれません。従って、元夫はたとえ親権を失っても養育費の支払い義務を負います。
なお、慰謝料と違って養育費は親の年収、子供の数・年齢によってある程度基準を設けられるので、裁判所は参考資料として養育費算定表を公開しており、おおよその額を知る事はできます。 -
年金分割
年金分割とは、婚姻期間中に夫婦が支払った厚生・共済年金額(いわゆる二階部分)の総額の一部(最大50%)を、納めた額が多い方(通常は夫)から少ない方(通常は妻)へ分割することをいいます。
具体的には、保険料納付記録を分割することになるので、分割を受けた側は自分自身が支給開始年齢に達しなければ年金は支給されませんし、受給資格要件がなければやはり支給されないことに注意が必要です。これも財産分与と同じく、2年の時効にかかります。
子どもの親権、面接交渉権のこと
親権
夫婦に未成年の子どもがいる場合、離婚の際に親権者を決めなければなりません。
話し合いで決着がつかない場合はやはり調停・裁判となります。裁判になった場合、裁判所は親の経済状態や家庭・教育環境など、あくまでも子どもの利益を第一に考えて親権者を決めます。
面接交渉権
面接交渉権とは、親権者とならなかった方が子どもと会ったり連絡したりする権利であり、親権者は一方的に拒否することはできません。
通常は日程(月1回など)・時間・場所・方法などを大まかに決めることになります。
姓のこと
親について
離婚すると、婚姻により相手の姓になっていた方(通常は妻)は、婚姻前の姓に戻ります。
しかし、離婚後3ヵ月以内なら役所に届け出ることにより婚姻中の姓を名乗ることができます。
子どもについて
子どもは親が離婚しても当然には姓は変わりません。
しかし、家庭裁判所の許可を得て役所に届け出れば、姓を変えることができます。
離婚内容が決まったら・・・
文書にする
上記の内容を決めたら、必ず文書、それも公正証書にしましょう。
「のど元過ぎれば熱さ忘れる」という諺もあるように、離婚が成立したら1・2回支払いをして終わり…ということも少なくありません。
そこで、公正証書にして「執行認諾文言」という条項を入れておけば、約束違反があった場合に裁判せずにすぐに強制執行できますし、何より相手に対して大きな心理的圧迫になるので任意の履行が期待できます。
不動産の名義を書き換える
財産分与として不動産をもらう場合、名義を書き換えなければなりませんが、いったん離婚届けを出したら相手は手続きに協力してくれなくなると考えておいた方が無難です。
そこで、権利書や印鑑証明書などの名義書き換えに必要書類は、届けを出す前に全てもらっておきましょう。
税 金
財産分与や慰謝料など、離婚時にもらうものにはあまりにも不自然でない限り税金はかかりません。
ただし、不動産等については、あげる側に譲渡所得税が、もらう側に不動産取得税がかかることもあります。